インランドデポ(Inland Depot)とは、港湾から離れた内陸部に設けられたコンテナの保管・入替・台切りを行う施設のことです。港湾ターミナルの一部機能を担う「内陸の港」として、輸出入コンテナの流通を支えています。
港湾混雑の回避、トラックドライバーの待機時間短縮、輸送スケジュールの安定化など、現代の物流課題を解決する上で欠かせないインフラのひとつです。
港湾ターミナルでは、荷役作業やコンテナの入出庫が特定の時間帯に集中し、ピーク時にはトラックの長時間待機や渋滞が発生します。この混雑は1本の輸送スケジュールに大きく影響し、物流全体の効率を低下させる原因にもなります。
インランドデポを港の外に設けることで、コンテナ受け渡しのタイミングを分散し、港湾ヤードの稼働を平準化することが可能になります。これにより、港湾内作業の負荷が軽減され、混雑による遅延や待機コストを抑えることができます。
港湾を起点とした輸送は、船舶の入港遅延や天候、港湾ストライキなど外部要因によってスケジュールが乱れるリスクを常に抱えています。一方、インランドデポを中継拠点として活用すれば、港湾側の変化に左右されず、内陸側で計画的に輸送を進める柔軟性が生まれます。
たとえば、輸出入コンテナを一時的にデポで保管しておくことで、船舶の入港遅れがあっても内陸配送のスケジュールを確保でき、出荷側・受入側の業務を安定的に運用することが可能です。つまり、インランドデポはリスク分散と輸送安定化の“緩衝地帯”として機能します。
2024年4月から施行された「働き方改革関連法」により、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限される、いわゆる物流の2024年問題が注目されています。これにより、港湾での待機時間や荷役の遅延が、従来以上にスケジュール圧迫の原因となっています。インランドデポの活用は、この課題に対する実践的かつ効果的な解決策のひとつです。
インランドデポを利用することで、港湾の繁忙時間帯を避けながら柔軟に運行スケジュールを組むことができ、ドライバーの待機時間を削減し、効率的かつ計画的な配送が可能になります。結果として、労働時間の適正化と稼働率の維持を両立し、企業のコンプライアンス対応にも貢献します。また、拘束時間の短縮は、安全運転や事故防止につながるだけでなく、輸送品質の向上にも寄与する重要な取り組みです。
インランドデポを拠点に輸送ルートを最適化することで、不要な空車回送や待機によるアイドリング時間を削減できます。これは単なる業務効率化にとどまらず、CO₂排出量を抑え、環境負荷を軽減する効果をもたらします。また、インランドデポを活用した「コンテナラウンドユース」などの取り組みと組み合わせることで、輸送距離そのものを減らし、燃料コストと環境負荷の両面で、より持続可能な物流を実現します。こうした活動は、企業のGX(グリーントランスフォーメーション)推進やSDGsへの取り組みとしての評価も高まっています。
このように、インランドデポは単なる“保管施設”ではなく、港湾・輸送・環境・人材の課題を同時に解決する物流インフラとして注目が集まっています。
インランドデポを経由すると「港→デポ」「デポ→納入先」と2区間の輸送が発生するため、一見コストが増えるように見える場合があります。ただし、港湾での待機・渋滞・ピーク時間帯の非効率を考慮すると、トータルではコスト削減につながるケースも多く、むしろ安定運行による利益改善効果が期待できます。
インランドデポを戦略的に運用できる物流会社は、現状ではまだ多くありません。主な理由として、莫大な初期投資と高度な運用設計の必要性が挙げられます。インランドデポの整備には、広大な土地や荷役設備、情報システム、人員配置など、多額のコストと専門的なノウハウが求められます。
また、港湾・内陸・顧客の各拠点を結ぶ複数ルートを統合的に管理するため、精緻なスケジュール調整や情報連携体制の構築も不可欠です。そのため、インランドデポを本格的に運用する事業者はまだ多くありません。
インランドデポを経由することで、港湾・内陸・最終納入先の三者間でスケジュール調整が必要になります。情報共有がスムーズでないと、運用効率が下がる場合もあります。こうした課題に対しては、一元管理システムや運行調整機能を活用することで、情報の見える化と即時対応を実現する取り組みも進んでいます。
インランドデポの効果は、立地条件によって大きく左右されます。港からの距離、高速道路や主要幹線へのアクセス、周辺交通量、地価などの要素が輸送効率に直結します。港から離れ過ぎている場合は、港湾との往復時間が増えコストが上昇する一方、都市近郊では土地確保や渋滞の課題が発生することもあります。
したがって、港湾アクセスと内陸物流のバランスを取った立地選定が重要なポイントとなります。
タツミトランスポートでは、埼玉県に自社インランドデポを保有。港湾と内陸拠点を結ぶ独自ネットワークを活かし、コンテナの保管・入替・台切り・輸送手配を一括で対応しています。
2016年に埼玉県狭山市で自社デポを開設し、2019年には約4,000坪へ拡張。運用ノウハウを積み重ねながら、安定した体制を築いてきました。初期投資や運用設計などのハードルを自社で乗り越え、実効性のあるモデルを確立しています。
さらに、港湾側の混雑や船舶の遅延など、外部要因によるスケジュール変動にも柔軟に対応できる運用体制を整備。現場判断と情報連携の仕組みを両立させることで、安定した輸送品質を維持しています。
インランドデポは、港湾の機能を内陸に分散させることで、港湾混雑の緩和と輸送効率の向上を図る拠点です。コンテナの保管・入替・台切り・輸送手配などを一括管理することで、港湾の変動要因を吸収し、安定した物流運行を支える役割を担います。その運用には、土地・設備・人員・情報システムなどへの初期投資が求められ、立地条件によって効果が左右されるなど、設計段階からの慎重な検討が必要です。
しかし一方で、インランドデポは港湾と内陸を結ぶ“緩衝地帯”として、2024年問題をはじめとする物流課題の解決に貢献できる仕組みでもあります。これからの物流において、インランドデポは単なる保管拠点ではなく、輸送の安定化と持続可能な物流構造を実現するための中核的な機能として、今後ますます重要性を高めていきます。