コンテナラウンドユース(Container Round Use)とは、輸入で使用したコンテナを港に返却せず、次の輸出貨物の輸送にそのまま再利用する取り組みを指します。通常、輸入後の空コンテナは港へ返却し、再び別の輸出貨物を積むために港から搬出するという、「返却 → 再搬出」という二重の工程が発生します。コンテナラウンドユースでは、このプロセスを省略し、前の輸入先から次の輸出先へ、空コンテナを直接回送することで、効率的な運用を実現します。
従来のように「港を基点とした往復型物流」から、荷主間でコンテナを循環させる“連続利用型の物流”へと移行すること。それが、コンテナラウンドユースの本質です。
従来のコンテナ輸送では、輸入貨物を降ろした後、空になったコンテナを港へ返却し、次の輸出貨物のために再び同じ港で別のコンテナを受け取る必要がありました。
このプロセスには、
といった問題があり、結果として物流全体に大きな非効率とコスト負担をもたらしていました。
コンテナラウンドユースは、この「空車回送」そのものをなくすことで、トラック・港湾・荷主の三者すべてに実務的なメリットを生み出す仕組みです。効率化と環境負荷低減の両立を実現する、次世代のコンテナ運用モデルとして注目が高まっています。
コンテナラウンドユースの最大の効果は、空車回送を削減することによる輸送コストの低減です。港への返却や再引き取りにかかる移動距離と時間を省くことで、
が実現します。
これにより、ドライバーの拘束時間も短縮され、稼働の安定化につながります。実際に、大手荷主企業では年間数千万円規模のコスト削減効果が報告されるなど、実績も出始めています。
コンテナラウンドユースは、CO₂排出削減に直結する環境配慮型の物流施策として高く評価されています。空コンテナの回送距離を減らすことで、燃料起因の排出量を直接的に抑制することが可能です。
また、ESG投資やサステナビリティ経営の流れが強まるなかで、荷主企業が取引条件として「環境配慮型物流」を求めるケースも増加。その対応策のひとつとして、GX(グリーントランスフォーメーション)推進の実効的手段としての注目も高まっています。
港湾ヤードでは、貨物の荷役作業そのものよりも、返却・受取手続きに伴う待機時間が大きな課題となっています。コンテナラウンドユースでは、港湾を経由せずにコンテナを循環させるため、
といった効果が期待できます。結果として、荷主企業・ドライバー・港湾の三者にとって業務効率の向上と安定稼働を実現します。
コンテナラウンドユースを図で説明すると下記のようになります。
コンテナラウンドユースには明確なメリットがある一方で、国内での普及は依然として限定的な状況にあります。
その理由として、主に以下のような課題が挙げられます。
これらの課題を解決するためには、物流事業者単独での取り組みには限界があります。フォワーダー、船会社、港湾管理者、そして行政を含めた「官民連携型の運用モデル」が求められています。
各プレイヤーが情報を共有し、責任範囲と運用ルールを明確化することで、ようやく本格的な普及が進む段階に入ると言えます。
国土交通省は、港湾機能の高度化や物流DX政策の一環として、コンテナラウンドユース促進を掲げています。現在では、マッチングプラットフォームの整備や、空コンテナのトレース管理システムの導入支援など、制度面・技術面の両側から環境整備が進められています。
物流企業にとって、コンテナラウンドユースは単なるコスト削減策ではありません。それは、サプライチェーン全体における競争力を高めるための戦略的取り組みです。持続可能な輸送モデルを提示できる企業は、荷主企業からの信頼性・協業性・環境適応力の面で優位性を築くことができます。
今後、コンテナラウンドユースは「効率化の手段」から「持続可能な成長を支える基盤」へ。物流業界における新たなスタンダードとして、その重要性はさらに高まっていくでしょう。
コンテナラウンドユースは、港を起点とした“行って帰る”物流から、荷主同士でつなぎ合う“めぐる物流”への転換です。その仕組みは、単に空コンの回送を省くものではなく、物流そのものを循環型に変えていく取り組みと言えます。
変化は決して容易ではありませんが、コスト・環境・効率のすべてを最適化できるのがコンテナラウンドユースです。これからの物流戦略において、新たな“標準”として欠かせない選択肢になるでしょう。